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管理人きりの創作と日常の記録。

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しょーとすとーりー。

今晩和。管理人、きりです。

今日は駅に着いた途端「運転見合わせ中です」の放送が流れて焦りました(笑)早めの電車に間に合うようせっかく走って来たのに、結局出社はぎりぎりの時間に。。。

遅刻はできればしたくないのでほっとしましたが。


今日の出来事は程々に(ほとんど無いに等しいですがw)、パラレルワールドのお話に移ります。
まだ正式タイトルは未定なので、しばらくパラレルワールドで通します。その話が3本できました(笑)

つづきからとりあえずお話が一つ読めますので、興味のある方はどうぞ。
あ、ちなみにタイトルはお題(「追憶の苑」さま)からお借りしています。

そのうちサイトの方にもページ作ってちゃんと載せます。
全然「ショート」じゃねええええええええ!!!!
って文句は受け付けません♪←


*登場人物紹介*

【クレイス】(20代中頃 男)
担当:魔導史、地理学教諭
原作:紅雨の剣
設定:
・授業と礼拝のない時は図書室で過ごし、自分用の机(段ボール)を司書室に設置して執務をこなす(要するに側にいたい)ほど、クレイヴァが大好き。愛情はオープンに表現する方で、彼の彼女に対する想いは学生にも知れ渡っている。
・これでも一応神父。週に一度、学校に隣接する教会で礼拝を行う。ただし原作と同様、神様は信じていない。諸事情により名字は内緒(理事長だけは知っているらしい)

【ルシア・リンスイート】(20代後半 男)
担当:校長
原作:CrossStories
設定:
・魔導医(魔法関連の病気を治す医者)を本業としつつも、人材育成に興味があって校長となる。
・司書のクレイヴァに想いを寄せているため、クレイスをよく思っていない。しかし代わりとなる人材がいないため、権力があっても左遷できない。
・クレイスに対しささやかな対抗?として、彼の執務室と講義室は図書室から一番遠い場所に設置するという、ちょっと職権濫用気味なところもある。

【クレイヴァ・セントレイム】(20代前半 女)

担当:司書教諭
原作:紅雨の剣
設定:
・膨大な魔導書、資料を管理する司書。守護精霊の月華とともに、書を必要とする学生たちのために日々広い図書室内を駆け回る。
・お礼を言われると「別に、仕事ですから」と若干照れながら答えるのが癖。口癖に現れるように、ツンデレ。
・クレイスのことは好きだとは言わないものの、とても大切な人だとは認識している。

【エルト・レーゼ】(20代前半 男)

原作:Nostalgia
学生。あとは本文の通り(ひどいww




079:いらないもの



 昼休みの終わる頃、いつものように図書室で過ごしていたクレイスは金色の髪を掻き上げ、講義室へ向かうために席を立った。

「クレイス先生」

 その彼を呼ぶ声に振り向くと、紅い髪の女性が歩み寄ってきた。その手にはくすんだ青い表紙の本と二つ折りにされた古紙が携えられていた。

「今朝頼まれた『ホルクベース王国に関する書物』と『1万年前の海岸線の地図』が見つかりました」

「ありがとうございます。使うのは来週の予定でしたが、せっかく見つけてくださったのですし、早速次の講義で使わせていただきますね。相変わらず仕事が早くて素晴らしいですね」

 彼女から差し出された資料を受け取ったクレイスは、惜しむことなく謝辞と満面の笑みを零す。それに対し、彼女は少しだけ頬を赤らめ、目を伏せるといつものように答えた。

「別に、仕事ですから」

「では」と短く言って踵を返した彼女の手を、クレイスは追いかけるように軽く掴む。

「あの、クレイヴァ先生。この間帰り道においしいパスタのお店を見つけたのですが、今夜ご一緒にいかがですか?」

「……え」

 今は昼休み。もうすぐ休み時間が終わるとはいえ、まだ数名の学生が図書室にいる。「自重しろよ」と冷ややかな視線を送ると思いきや、彼らが相思相愛だと思っている学生たちにとってはその少しぎこちないやりとりが逆に微笑ましいようで、全員が堪えきれず笑みを浮かべていた。動揺して数秒間、ルビーのような赤い目を泳がせていた彼女だったが、やがて小さな声でそれに答える。

「仕方ないわね、今日は特に用事もないから……」

「クレイス先生!」

 このままの流れならば彼女からは良い返事が期待できるはずだった。しかしそれを掻き消すように彼は名を呼ばれ、仕方なくその声の方を見やる。視線の先、彼の後方には赤い髪をもつ、白衣を着た若い男が息を切らせていた。

「おや、ルシア先生。このような時間にこちらへいらっしゃるとは珍しいですね。今日の診療は午後からのはずでは?」

 彼はルシア・リンスイート。この学院の校長の一人であり、魔法に関する病を治療する現役の魔導医でもある。どうやらクレイヴァに気があるようで、彼女の側にいるクレイスへちょくちょくちょっかいを出してきている。

「それより、勤務中にそういう私的なことは……控えていただけませんかね?」

 クレイスの亜麻色の瞳はいつでも穏やかだが、他人の感情を読みとるのが得意な彼は、敵意を向けられたことに気づいたのか、目を細める。

「昼休みは勤務外の時間ですが、問題ありますか?」

「あくまでここは教育の場だ。周りの学生の事を考えて、彼らの集中力を乱す行為はご遠慮願いたいね、クレイス『先生』?」

 もっともらしいことを言いつつ、単に彼女へ言い寄る男を牽制したいだけなのだろう。ルシアは青銀色フレームの眼鏡からのぞく、その青い瞳に嫉妬の感情を滲ませながらそう言い放った。

「ふむ。確かにそうですね、分かりました。以後気をつけましょう。では、クレイヴァ先生、また講義の後で」

 受け取った資料を右手に携え、クレイスはその後の返事も聞かずにあっさりと図書室を出ていった。その潔さが、彼の爽やかさを引き立たせていた。「嫉妬に駆られていてカッコ悪い」と学生たちに思われていることを知ってか知らずか、彼は諭すような口調でクレイヴァへ言う。

「クレイヴァ先生、もう少し毅然として『No』と答えて良いんですよ。あの口先だけの似非神父に感情を流されてはいけません!」

 年若いながら、魔導医の権威であり校長という立場の彼に圧倒されたのか、彼女の背筋が自然と伸びる。

「は、はい……」

「それと!」

「はいぃ!」

彼の大きな声に驚いたように、思わず裏返りかけた声で返事をした彼女の様子が面白かったのか、彼は少しだけ機嫌が良くなったようだ。口元に手をやると、怪しげな笑みを浮かべた。

「あぁ、そうだ。司書室にあるあの『ゴミ』、早急に処分しておいてくださいね」

 そう言われた瞬間、彼女はドキリとした。無言の彼女に「いいですね?」と釘を刺すと、ルシアは腕時計を見て時間がないことに気づいたのか、足早にそこを後にする。彼が去った後、その様子を眺めていた学生の一人が彼女に歩み寄り、困り果てたように立ちつくす彼女の耳元に顔を近づけた。

「やーなヤツ、だよね。クレイス先生の『私物』を『恋人』に捨てろだなんてさ」

 耳元で発された声がくすぐったかったのか、振り向いた彼女は耳を押さえて飛び退いた。

「レーゼ君!? 何を言って……あたしは彼とは何も……」

 クレイスの方が高いが、それでも170センチ後半はあろう長身と、肩までつく長めの茶髪を後ろで結った碧眼の青年は、エルト・レーゼ。成績は悪くないものの、出席日数が足りずに2年ほど留年しているらしく、在学生の中では最年長だ。その彼が読書の為にかけていた眼鏡を外し、楽しそうにニヤリと笑って言う。

「あのやりとりで『何も関係がない』なんて言わせないよ?
 どう見たって恋する乙女の目をしていたよ、先生。大丈夫、とってもお似合いだから、あんな嫌味校長の言う事なんて聞かなくていいって」

 自身の瞳と同じように頬を紅く染める彼女の肩をぽんぽんと軽く叩くと、エルトは話題に上っていた『彼』の講義を受けるために、その場を後にした。


 『ゴミ』と呼ばれたクレイスの『私物』とは、図書室に隣接しているクレイヴァの執務室である司書室に置かれた大きめの段ボール箱のことだ。端から見れば確かにゴミに見えなくもないが、これは少しでも彼女の側にいたいクレイスが、図書室から一番遠い位置にある自分の執務室ではなく、彼女の執務室で仕事をこなすために持ってきた『机』だ。講義や礼拝のない時間をほとんど図書室か司書室で過ごすクレイスは、ここで一通りの仕事をこなしている。

 今は彼がいないため、邪魔にならないよう畳まれて壁際に立てかけてある段ボールを見つめ、彼女はふと、彼がここに来たときのことを思い出す。


『こんな広いところで一人って、寂しいと思いませんか?』


段ボール箱を持ってここに現れた彼が彼女に言った、初めての言葉だった。精霊を宿す彼女は、正しく言えば一人ではなかった。図書室は教師が集まる職員室から少々遠い場所にあり、仕事のために行き来するのは面倒だ。仕事上こちらにいるほうが便利とはいえ、隔離されているようで物寂しい気持ちにならないはずがなかった。


『私も仕事柄、資料室の側に執務室があるので仕事をするときは大抵ひとりぼっちなのですよ。よかったら、ここで仕事させていただいてもよろしいですか?』


 「こちらにも資料もたくさんありますし」と、屈託無く笑った彼の顔を、今でも鮮明に覚えている。あれから数カ月経ち、毎日のように机として使われ続けた段ボール箱は、執務中にこぼした紅茶でしみができたり、何度も組み立てと折り畳みを繰り返したりしているためか、ルシアに『ゴミ』と呼ばれてしまう程にすっかりとくたびれてしまった。それでも、彼女はそれが彼と過ごした時間を示すアルバムのように思えて、逆に愛着が湧いていた。

「いらないもの、だなんて思えないよ」

 彼女はそう呟いて、段ボール箱と並ぶように壁へ背を預けると目を閉じる。そして、いつものように彼が講義を終わらせて、院内の端から走ってくる音を待ち遠しく思うのだった。



という、二等辺三角関係なお話でした。
(三角関係の△を表したとき、クレイスとクレイヴァ間の辺は短いけど、二人とルシアの2辺は長いという意味で)

読んでくださった方がいましたら、ありがとうございますm(_ _)m
こんな感じのお話を、お題をテーマにしつつぽちぽち書いていく予定です。
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